茨城大学 中島研究室

1. 誘電体材料の創製
 強誘電体として知られるチタン酸バリウム(BaTiO3)は携帯電話やパソコンなどの積層セラミックコンデンサ(MLCC)として電子機器に使用されており、我々の生活に欠くことができない物質です。高誘電率を有する誘電体の創製を目指してBaTiO3の粒子設計に取り組んでおります。また、粒子表面を利用した材料設計を目指していますので、電子顕微鏡を用いて粒子表面の原子配列を観察し、誘電特性との関係を明らかにするために研究に取り組んでおります。これまでにソルボサーマル法により合成したBaTiO3ナノキューブは、粒子表面にチタンカラムによる表面再構成があることを明らかにしております。

【論文】
・Kouichi Nakashima*, et al., ACS Omega, 6, 9410-9425 (2021). DOI: 10.1021/acsomega.0c05878
・Kouichi Nakashima*, et al., ACS Omega, 6, 32517-32527 (2021). DOI: 10.1021/acsomega.1c04013


2. コア-シェルナノキューブの創製
 ソルボサーマル法により合成したBaTiO3ナノキューブの表面再構成は酸化チタンにより形成されていると考えています。この酸化チタンを原料と見立てて反応さると、粒子表面にチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)またはチタン酸カルシウム(CaTiO3)のシェルを形成させることができました。このシェルを形成しているペロブスカイト型酸化物の厚みは約400pmで、1ユニットの単位格子になります。コアがBaTiO3で、シェルがSrTiO3またはCaTiO3であるコア-シェルナノキューブを創り出すことができました。

【論文】
・Kouichi Nakashima*, et al., Inorganic Chemistry, 63, 44-49 (2024). DOI: 10.1021/acs.inorgchem.3c02935


3. 複合アニオン化合物の作製
 複合アニオン化合物は複数のアニオン(O2-、H-など)を含む物質で、物質・材料研究を新しい次元に導く可能性を秘めています。水熱法により合成したBaTiO3キューブを起点としてトポケミカル反応を行い、BaTiO3-xHxキューブを創り出すことができました。

【論文】
・Kazunari Arai, Kouichi Nakashima*, Hiroshi Kageyama*, et al., Inorganic Chemistry, 63, 23260-23266 (2024). DOI: 10.1021/acs.inorgchem.4c03757


4. 格子欠陥の評価
 機能性セラミックスの物性と格子欠陥は密接に関係しています。格子欠陥の有無によって機能性セラミックスの性能は変化します。そのため、さまざまな手法を用いて多角的に格子欠陥を評価しています。とくに粒子表面と粒子内部の格子欠陥は分けて考えております。

【論文】
・Kouichi Nakashima*, et al., Chemistry of Materials, 36, 8323-8329 (2024). DOI: 10.1021/acs.chemmater.4c01245